Ichiku Kubota Art Museum
久保田一竹美術館
着物が好きな人なら憧れる人も多い「辻が花」。
室町時代に栄えた絞り染めをベースに、描き絵、摺箔、刺繍を加えたもの。始めは庶民の小袖から始まり、後に武家に愛され、高級品として一世を風靡した着物。久保田一竹氏は、20歳の時に「辻が花」と出会いその美しさに惹かれ、伝統をよみがえらせながらも独自の感性で多くの「辻が花」の作品を生み出した。
そんな「辻が花」の魅力を堪能できる美術館が都内からちょっと足を伸ばした、 山梨県河口湖の近くにある。それは「久保田一竹美術館」。
富士山に近い自然が豊かな敷地に建つ美術館で、まず印象的だったのが突然現れる「扉」。建物や壁がないのに突然その扉だけが現れ、不思議な雰囲気だ。よく見ると繊細な木彫りがしてありエキゾチックな扉は、インドの古いお城で使われていたものを持ち帰り組み合わせてつくったそう。
マイナスイオンあふれる緑豊かな敷地内には川が流れていて、エキゾチックなアートが点在している。季節によって様々な表情をみせてくれるので、いつ訪れても新鮮。
苔むしたみずみずしい庭園は京都の造園家・北山安夫氏が手がけたもの。和の要素を感じるけれど、琉球の石灰石や富士の溶岩石が置かれているなど独特で、無国籍なアジアの庭園という雰囲気。
辻が花の展示がある本館は、木組みの奥に高い吹き抜けの空間が広がり、見上げるとダイナミック。その高さはなんと13メートルとのこと。木組みには一千年を超すヒバの木が使われており、思わず深呼吸したくなるような空間。
そんな空間に堂々と現れる辻が花は刺繍が立体的に浮き出て見え、まるで着物をキャンバスにした絵画のよう。一代目と二代目の作品はそれぞれ個性が異なり、一代目が写実的で日本の伝統を重んじるのに対し、二代目はちょっとアバンギャルドで抽象的。
一代目、二代目に通じるものといえば、着物を見ていて宇宙を感じる、ということ。着物に描かれた世界にすいこまれそうになった。いつか一度でいいから、この着物を着てみたい。
「辻が花」を鑑賞した後は、茶房「一竹庵」で一休み。ここも空間が素晴らしく、滝を見ながらお茶を頂くことができる。床には珊瑚などの琉球石灰石が敷き詰められ、壁には沖縄漆喰が施され、あたたかい雰囲気。
椅子やテーブルなどのインテリアは、一竹がインド、アフリカ、東南アジアから集めたもので、国はバラバラでもどこか統一感があり居心地がいい。私はお抹茶とお汁粉のセットを味わったのだが、滝を見ながら頂くと不思議と癒された。
晴れている日には富士山が見えるオープンテラスのカフェも良い。白い石が積み上げられた柱の回廊が洞窟のような雰囲気で、庭園を見渡しながらお茶ができ、美味しいスイーツも頂ける。
美しい日本の伝統を、東南アジア風のエキゾチックな空間で楽しむ美術館。次回は着物を着て訪れたい。
2007 July
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