Kanazawa

金沢で現代アートと伝統的な茶屋街を満喫。

2005 November


慌ただしい日常を離れようと、なんとか予定を合わせて決行した晩秋の女2人旅。

夜行バスに飛び乗り、朝起きると石川県金沢市の香林坊に着いていた。


香林坊はその名の通り、香ばしいくらいに緑が生い茂った林道。ちょうど紅葉の時季で、黄色や赤に染まった葉っぱがしっとりと水にぬれていて風情がある。


時雨亭や松尾芭蕉が俳句を詠んだといわれる山崎山、雁行橋、夕顔亭。茅葺き屋根の建築や、紅葉した落ち葉で赤や黄色になった絨毯のような地面を歩いた。松をはじめとする木々は、もう積雪対策の木組みをつけられていた。これから雪が深く積もっていくのだろう。


金沢城跡の庭園で城壁や倉を巡っていて印象に残ったのが、独特の雰囲気をもつ淡い石の色。


今回の金沢旅行の最大の目的、ずっと見たいと思っていた金沢21世紀美術館へ。ちょうど昨年の秋オープンした、SANAAの設計の現代アート専門の美術館。

大きな曲面ガラスにきれいに納められた展示室。外からは中に入っている様々な形、大きさの長方形が見え、天井からもぽこぽこと長方形が突き出していて、中に入ってみたいという好奇心がかきたてられる。

ガラスの内部には有料ゾーンと無料ゾーンがあり、無料ゾーンには天井がぽっかりとあいているジェームズ・タレルの部屋やミュージアムショップ、カフェ、図書館などが。有料ゾーンでは「もうひとつの楽園」展という国内外の現代アーティストの作品を紹介する展示が行われていた。


ガラスの映り込みで、「外」なのか「内」なのか。空間によって作品の印象も変わって面白い。廊下には有名なデザイナーズチェアが置かれ、座ってみたかった椅子を見つけるとつい座りたくなってしまう。

展示は隈研吾氏のインスタレーションやステンレススチールの装置の上で水の玉がころころと流れていく原研哉氏のインスタレーションなど、豪華な内容で楽しめた。中でも特に印象に残っているのがアンジェロ・フィロメーノというイタリア人アーティストの展示。巨大な染め布に刺繍のアートを施しており、その色使いや曲線、刺繍のキラキラした糸の組み合わせが絶妙。

透明感のあるライブラリー。カラフルなスワンチェアが浮遊感を演出している。透明な椅子はフィリップ・スタルクの名作家具「La Marie」。「透明感」というのはこの美術館の一つのテーマなのかもしれない。

有料ゾーンに入ってすぐのところにあるプールのアートもユニーク。

地下に入ると、まるで水の中にいるよう。一方プールを上から見下ろすと、プールの中にもう一つの世界があるように見える。

美術館の後は金沢の伝統的な町並みが残る重要伝統的建造物群保存地区「ひがし茶屋街」へ。京都でも鎌倉でも見ることのできない独特の町並み。

シンプルな書院造りの木造家屋が建ち並ぶ茶屋街。お茶屋は琴や舞など、芸妓の遊芸を楽しむ、格式高い上流町人の社交場なのだそう。

古民家を改装したカフェでひと休み。2階は天井が高く、梁がむき出しになっていた。

趣ある小さな中庭や薄暗い照明が落ち着く空間で、旅の疲れも吹き飛んだ。

紅葉と金沢の街並みはよく合っていて、晩秋のこの季節に金沢を訪れることができて良かった。

なんてことないお土産屋さんも、いい味出してるのだ。

初めての街に行く時は、商店街に寄ることを忘れない。夜の商店街はカラフルでにぎやか。

谷口吉生の父・吉郎と、吉生の唯一の共作「金沢市立玉川図書館」。大正2年建立の煉瓦造の建物を保存して造られたというどっしり構えた古い建物。増築部分は長方形のコンクリートとガラスを組み合わせたつくりで、垂直性を感じさせる空間は谷口氏の設計らしい。夕方5時を過ぎて薄暗いなか、窓から漏れる温かい光が私たちを迎えてくれた。

yuuki photography

佑季 Yuuki 旅と建築探訪の写真、エッセイ Photo Essay Travel & Architecture

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