3 Architectures in Tochigi

石の美術館、那須歴史探訪館、馬頭町広重美術館を見に、栃木県那須へ


新緑のさわやかな季節、建築家・隈研吾氏設計の3つの建築を見に、建築学科の先輩たちとドライブで栃木県の那須を訪れた。

まず1つ目が「石の美術館」。建物は那須高原特産の芦野石で造られ、石のルーバーが「和」の雰囲気。お天気の良い日で、建物の外を歩いていると光が石で反射してまぶしいくらい。美術館の中に入ると、石の建物特有のひんやりとした空気が感じられ、ついヒソヒソ声になってしまうくらい静か。

美術館の周りには水が張られ、橋を渡って美術館にアクセスする。するとぼんやりと光る石のオブジェが並んでいるのが見えてくる。石と水でつくられた空間は静謐で、まるで美術館自体が展示品の一つのよう。

ここでは石のオブジェのほか、石の彫刻など石に関する様々な試みが行われ、年に数回コンサートも開催されている。ユニークなのが、石でできた茶室があること。芦野の御殿山は桜のかくれた名所。美術館からお山の桜を眺めながらの一服は、きっと最高だろうなあ。



次に訪れた建物は、石の美術館から歩いていくことのできる距離にある「那須歴史探訪館」。那須の歴史に関する資料が時代ごとに展示されている建物だ。この建物の特徴の一つは、「藁」のスクリーンを使っていること。この藁も石の美術館の「石」と同様に、地元でとれたものを使用していることから、隈研吾氏の地元の素材を使って建築をつくるというコンセプトを感じ取ることができる。

建物の中に入ると、優しい自然光が降り注いでいることに気づく。これはガラス張りの天井と壁に貼られた藁のスクリーンを通して入ってくる光。このスクリーンがあることで夏は涼しく、冬は暖かく室内が保たれており、まるで日本の古い家屋のよう。天井と壁のスクリーンは可動式で、光の量も調節できるという訳だ。

他にも入口の自動ドアが和紙でできていたり、床には石の美術館で登場した芦野石が使われていたりと、いたるところに「和」の素材が使われており、ホッと落ち着く空間となっている。

この建物は周りを竹林で囲まれている。和の素材でできた建物は竹林になじんでいて、建物の中にいても藁のルーバーのあいだのガラスから竹林が見えて気持ちが良い。

もう一つ印象に残っているのが、建物の横に置いてあったベンチ。張力を利用した細長い金属のベンチで、あまりの座り心地の良さに驚いてしまった。

そして最後に訪れたのが「馬頭町広重美術館」。その名前の通り、幕末の浮世絵師・歌川広重の作品を中心とする浮世絵の美術館だ。

平屋建てで切妻の大屋根の落ち着いた外観をしている。建物に入ると、浮世絵の良さを引き出すような仕掛けの数々に驚かされる。

美術館全体が地元産の八溝杉によるルーバーに包まれ、時間とともに移りゆく光によって 表情が変わる。ガラスと杉のダブルスキンの空間構成は、伝統的な「和」と現代的なものが調和しているようでもあった。

内装にも地元の素材を使っており、壁には烏山和紙、床には石の美術館にも使われていた芦野石が使われている。地元の素材を使っているから、建築がその土地にしっくりと溶け込んでいるのだ。

3つの建物を見た後は、那珂川沿いにある「いさみ湯」へ。着いたのはちょうど夕方で、だんだんと日が暮れて夕焼けが見える頃。こじんまりとした素敵な旅館で、この日は泊まらず日帰り温泉のみ。

露天の温泉に入ると、そこには桜の木が。桜の花びらが散り、桜の花びらのじゅうたんができていて、そこに夕日が差し込む風景はまるで絵画のように美しかった。そんな美しい風景を見ながら温泉に入れるなんて、日本人で良かった。

お湯は100%天然でアルカリ性なので、お肌がつるつるに。

和紙の中から柔らかい光が広がるような素朴な照明など、細かいところにセンスが感じられる空間。照明はすべて手づくりだそうで、眺めていると旅の疲れもどこかへ行ってしまった。

2004 April

yuuki photography

佑季 Yuuki 旅と建築探訪の写真、エッセイ Photo Essay Travel & Architecture

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