Australia Sydney

オーストラリア シドニー

2007 February


日本では真冬の2月、南半球のオーストラリアは季節が逆で真夏。現地リポーターの仕事で訪れた、私にとって初めての南半球の街・シドニー。カラッとした気持ちの良い気候で迎えてくれた。

シドニーの街を散策していると、ターミナル・サーキュラーキーにシドニーの街を一望できるスポットを見つけた。と言っても模型だけれど。ライトアップされた小さなシドニーの街の上を歩けるなんてユニーク。


「夢への架け橋」。きらめくシドニーの夜景にかかるハーバーブリッジを見た瞬間、そう思った。シドニーのもう一つのシンボル、オペラハウスは海の向こうに白く浮かび上がり、まるで蓮の花びらのよう。



滞在中は撮影チームで一軒家を丸ごと借りて暮らした。


CITYと呼ばれる中心街の真ん中にはHyde Parkという大きな公園がある。天気のいい日はカフェではなく公園のベンチに座ったり、芝生の上でランチするのが一番美味しい。私たちが食べたパニーニやクロワッサンは日本の5倍くらいの大きさで、信じられないくらい巨大だった。お味は良かったのでさらにびっくり。


印象的だったのは、オーストラリアの人々の公園の使い方。芝生に座る時、日本ではレジャーシートを敷いてお弁当を食べたりするけれど、ここオーストラリアでは湿気が少ないからなのか、みんな芝生の上にそのまま座ったり寝転がったりして気持ちよさそう。公園内にはごみも全く落ちていない。街の人々が公園を愛し、まるで公園を自分の庭のように使っているように感じた。

公園の使い方の違いは、欧米とアジアの住居の違いにも通ずると思う。欧米では家の中でも靴を脱がない。靴を脱ぐのはベッドに入る時だけ。一方、私たちの住む日本では家に入る時、まず玄関で靴を脱ぐ。これは欧米とアジアの「Public」と「Private」の領域の違いに通じると思う。例えば昔の江戸時代の城下町は、天守閣を中心として幾重にも濠や石垣を巡らし、その外側に町をおいていた。一方、中世のヨーロッパではお城の周りに城下町を配置し、城下町の周囲を城壁が囲っていた。気候、風土、民族の違いから「内」と「外」に対する考え方が異なり、公園の使い方まで違うのは興味深い。日本人の私の目から見ても、ここでのオープンな公園の使い方、オーストラリア人の公園に対する愛着心はステキだと思った。


オーストラリアには他大陸では見られない、珍しい動物に出会うことができる動物園がいくつもある。その珍しい動物の代表がコアラ。まるまるとしたコアラはまるでぬいぐるみのようで可愛らしい。1日のうち19時間は寝ているというコアラ。もそもそと動いてユーカリの葉を食べている姿は珍しい。ユーカリの葉は50%以上が水分で構成されているので、コアラは水を飲まずに水分補給ができるそう。ちなみに「コアラ」とはアボリジニ語で「水を飲まない」という意味。


何よりもシドニーの街を象徴しているのは新と旧が混在する中心街・シティだと思う。銀行や商社の入った高層オフィスビル、ショッピングモールなどガラスや鉄を用いた近代的な建物があるかと思えば、その合間には築100年以上のものと思われる石造りの味のある建築が大切に使われている。

この国には築100年以上の建物は壊してはいけないという法律があるのだそう。古きよき町並みを守り、大切に使うという考えはヨーロッパから受け継がれているのだろう。ヨーロッパやアジア各国の移民が集まってできた街・シドニー。新と旧が交じり合いながらも不思議と居心地のいい街並みは、多様な民族や価値観を受け入れるこの街の、寛大で柔軟な精神から生み出されている。

シドニーのシンボル・オペラハウスは、デンマークの建築家ヨーン・ウッツォンの設計による港に浮かぶ帆のようなデザイン。斬新なフォルムで、近くで見ると急な曲線に驚く。内部には劇場や図書館、レストランなどが入った複合施設となっている。印象に残ったのが内部空間の素晴らしさ。天井には存在感のあるコンクリートの梁、コンクリート壁は光と影でモダンな空間に演出。何気なくトイレに入って驚いた。洗面台はうねる一枚の板でできていて、洗面器と台が波のように交互にあらわれている。個室も壁面に埋め込むようにトイレットペーパーが設置され、内側から照明が光るようなインテリア。名建築はトイレにまでこだわるというけれど、オペラハウスは細部まで手を抜かない、建築家の想いが伝わってくる空間だった。

シドニーの中心部からバスに揺られてうとうとしていると、「100% CHOCOLATE BAR」と書かれた看板が目に飛び込んできた。チョコレートに目がない私は、早速中に入ってみることに。

所狭しと様々なチョコレートが並ぶ店内。チョコチップを溶かして保存するチョコレートマシンの中にはチョコレートを撹拌するためのプロペラがぐるぐる回り、マシンから出たパイプはキッチンの方につながっていた。

メニューはもちろんチョコレートづくしで迷ってしまう。私が食べたのはホットチョコレートで、ワッフルとストロベリーに温かいチョコレートがかかっているもの。本当に美味しくて幸せ気分に。仕事の合間に、こんな素敵なお店を見つけるとは。

他にもチョコフォンデュやチョコレートカクテルなどがあり、人気なのはチョコレートピザだそうで、どれも美味しそう。

このチョコレートカフェ「MAX BRENNER」はイスラエル生まれで、NYやシンガポールにもあり、その後2014年には東京にもオープンしている。


洗練とゆとりの魅力をもつ街・Double Bay。シドニー最大の歓楽街であるキングスクロスの北東の海岸沿いに並ぶ「ベイエリア」という高級住宅街へ。インテリアやファッションなどセンスのいいお店が並び、ただ街を歩いているだけでも楽しい。カフェやレストランではオーガニックな食材を使った料理が食べられる。どのお店も個性的で質が高いけれど気取った雰囲気はなく、オーストラリアらしい明るくフレンドリーな店員さんが迎えてくれる。洗練された街と、人々の優しさからあふれるゆるやかな空気。シドニーに行くのなら、是非訪れてほしい街。


シドニーで最初に入植が行われたという歴史的な地区、ロック。当時の労働者の住宅や港の倉庫や宿屋などの古い建築を修復し、レストランやショップに改装している。元は赤レンガ倉庫だったというレストランで、シドニー滞在最後の夜にディナーを頂いた。外につながる開放的な空間で、テラス席は潮風が気持ち良い。

シャンパンで乾杯。パスタに、白ワイン。オーストラリアならではの食、カンガルー肉とワニ肉にも挑戦。カンガルーの肉はどっしりとしていて牛肉と魚肉の中間のような味。ワニ肉はさっぱりと軽くて食べやすかった。

1週間のシドニー滞在は仕事だったけれど、気持ちの良い気候とおおらかな街の雰囲気に心も身体ものびのびとリラックスできた。次に来る時はもっと自然を満喫したいな。

yuuki photography

佑季 Yuuki 旅と建築探訪の写真、エッセイ Photo Essay Travel & Architecture

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