Jiyugaguen Myonichikan

自由学園明日館


池袋のメトロポリタン口から目白方面へ歩いていくと、繁華街の池袋とはうって変わって閑静な住宅街へと入っていく。するとまるで積み木のように可愛らしい建物が見えてくる。

ここは自由学園明日館。大正10年生まれの学校として利用されていた建物だが、今はその役目を終え国の重要文化財に指定されている。

建物を設計したのは、世界の三大建築家の一人、フランク・ロイド・ライト。日本にあるライトの作品は、この自由学園明日館を含めてたった2つ。アメリカ人のライトは出身のウィスコンシンの大草原で住宅を建てていた経験から、広い大草原に建つような水平方向を意識したデザインが特徴。それはこの明日館でも見ることができる。

この建物で特に素敵なのが幾何学模様の装飾のついた大きな窓。日中は木漏れ日が差し込み、とても良い雰囲気。ライトは家具も建物の一部だという考え方をしていて、例えば喫茶で使われている「六角椅子」やテーブル、照明の一つ一つが建物の雰囲気に調和している。 

喫茶付見学券を買えば、お茶やコーヒーを飲みながら中をゆっくり見学することができる。喫茶では紅茶か珈琲を選べて、クッキーかパウンドケーキがついてくる。珈琲のいい香りが漂うぬくもりある空間。そこで頂くお茶とお菓子は格別だ。


この建物はダンスやショーの舞台としても使われていて、私は2011年にここで舞踏家・振付家 白井剛氏のダンスの公演を鑑賞した。ダンスのタイトルは「静物画 still life」。客席は空間を見下ろすようにつくられていて、私たちは部屋の中で起こっていることを覗いているかのよう。


音楽はなく、かわりにグラスのぶつかりあう音や、人の足音がリズムに。ダンサーの身体は軽くなったり、重くなったり。重力を表現するために、静物画に出てくるようなりんごのモチーフやハンガー、ティッシュなどがダンスの一部に使われ、日常の何気ないしぐさや「音」がダンスになる瞬間に惹きこまれた。積み木みたいなレトロな建築の空間をうまく利用したミニマルなダンスで、明日館でしかできない作品だった。


ちなみに2013年のFashion Week TOKYOでは、SOMARTAがここで秋冬コレクションのファッションショーをしたことでも話題に。配信された映像を見たら、小さい部屋でこじんまりとショーが行われ、プレスがぎゅうぎゅう詰めに入っていて。大きなホールのような派手さはなく、アットホームで可愛らしかった。過去にはミントデザインズのファッションショーも行われている。


素晴らしい空間は、アートやファッションにもインスピレーションを与えてくれる。

yuuki photography

佑季 Yuuki 旅と建築探訪の写真、エッセイ Photo Essay Travel & Architecture

0コメント

  • 1000 / 1000